〝セックスするだけの人形〟として無神経な言葉を浴びせられていた私。自分の中に生まれた感情を適切に処理できなかった過去【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第35回
【セックスするだけの人形?】
最後に自分の中に生まれた感情を、怒りを怒りとして、悲しみを悲しみとして適切に処理をしたのはいつだっただろうか。怒りを覚えたとしても、そのエネルギーを相手に返すような行為はしてこなかった。静観することが一番の解決だと思っていたが、現実は相手を図に乗らせるだけで何の解決にも繋がらない。そして何よりも、私が私の人生を卑下して、何かに対して諦めを持っていることが一番の問題で、こんなちっぽけなことに縛られていた自分が恥ずかしくなってしまった。そんな過去の自分にも、未来の自分にも示しのつかない馬鹿なことは全て辞めてしまおう、そう誓った。
思いのほか行動に移してみるとあっけなく、抱えてきたものが軽くなった。こんなことなら早くやってしまえばよかったが、これまでの人生と違う波に乗り始めた今のタイミングだからこそ、こんなに簡単にできたのかもしれない。
私は〈渡辺まお〉でもあったし、現在〈神野藍〉である。それと同時に〈私〉であることも紛れもない事実である。そして全ての存在が意思や感情が存在するれっきとした人間であって、セックスするだけの人形でもなければ、誰かが作り上げたこうあるべきという理想の姿を演じる人形でもないのだ。
「私の好きなようにさせて」
最後で一回きりの人生を私と、私が抱えられるだけの大事な存在のため、欲のおもむくままに歩んでいきたい、もう何にもーそれは他人や、時には自分にさえも屈することなく。
(第36回へつづく)
文:神野藍
※毎週金曜日、午前8時に配信予定
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